実戦ハンドボールQ&A
ボールを握ることのできる手の大きさをもっていれば握った方がよいでしょう。握ることによって自由自在のボールテクニックを得ることができるからです。最近は外国チームの来日が度々あり、ボールを完全に握ってプレーするのを見る機会が多くなりました。完全に握ってプレーすることによって非常にプレーの幅が出てくることがプレーヤーの間でも認識されるようになり、握ってプレーする選手が多くなってきました。体育館でプレーすることが多く、特殊な松やにも入手できるようになり、またボールも握りやすく大きさもー定で昔のように使えば使うほどふくらんでくるものではなくなってきたことも大きな理由です。一昔前のように屋外でプレーし、ボールも大きくいびつになっていては、握るにも握りようがありませんでした。ボールを握ってプレーする利点は次のようなことがあげられます。
手首のスナップを使ってパスをすることができるので、右方向にも左方向にも早くて小さいモーションでパスすることができます。特に右利きの人が右方向にパスするラテラルパスは、握ってパスするプレーの典型で、鋭く小さいモーションで行うことから、相手にパスのタイミングや方向を読まれないという利点を持っています。
次頁の連続写真は、①〜⑩までの間に二回のパスが行われていますが、いずれのパスも握ってプレーしているために握らずにプレーするのとは違った効果が現われています。片手で握ることによって、デ」フェンスに当たられている時は、ボールを遠ざけてボールを守り、パスをすべき瞬間がくれば、そのままの姿勢からパスしてしまいます。握らなければこのようなプレーはなかなかできません。
自由自在にパスができるということは手首を使ってパスができるということとともに自由自在にバックスイングやフォワードスイングができるということも関係してきます。例えば、ボールを握れなければ、オーバースローのバックスイングからサイドスローに切り換えることはむずかしくなります。またアンダースローのバックスイングからオーバースローのフォワードスイングをすることもむずかしいでしょう。オーバースローと見せかけて(オーバースローのバックスイングをして)サイドスローに切り換えてのシュートなど最近サイドでよく使われるシュート法もボールを握れるからこそできるプレーといえます。
シュートとまったく同様な動作でシュートフェイントしてもボールが離れない。 ボールを握ってのフェイントの動作は日本人が外国に遠征してとまどったものであり、ボールを握ってプレーすることによって非常な技術差の出ることに驚いたものです。パスやシュートのフェイクに握るプレーは有効で、足を使って抜くフェイントでも大きな動作ができ、有利になります。両手でボールを持ってフェイントする時はボールを移動する範囲がせまいのでディフェンスにボールをアタックされやすいからです。
以上のように片手で握ってのプレーは動作を大きくし、自由自在なボールテクニックを得ることができますが、ボールを完全に握れるトレーニングと握ってのプレーをよく練習しないと大事な時にポロリと落としたり、オーバーステップをしたり、ボールを持ちすぎてディフェンスにつかまり味方のチャンスをつぶすという結果になりかねません。
ハンドボールの技術的な特性の一つは握ってプレーすることにあります。 もともとハンドボール競技は欧州を中心として発展してきたものであり、ボールの大きさやその他の規格は外人に合わせて作られたものなのです。外人にとって握って行うプレーは、肯否の問題でなく握ってプレーするのが当然であり、それが技術的な特性の一つになっているのです。形態的に劣る日本人が、外国人用の大きなボールを握ることはたやすいことではありませんが、握るトレーニングを積むことによって、可能になります。
ボールを握るにもいろんな段階の人がいると思います。楽々と握ることができる人、力を入れて握らなければ握れない人、力を入れて握っても限界のある人などいろいろと思いますが、シュートの時は、野球のボールのように楽々と握ることのできる人以外は、投げる直前に手首をゆるめてリラックスさせて投げた方がよいようです。というのは、握るのに指の力を加えている人は手首が固定されてスナップがきかないためです。 ボールを握るためのトレーニングは、226頁を参照して下さい。
(大西)